転写シートを使ったプリント基板の製作

電子工作,電気回路,電子回路,電気資格 2016/8/11 電子工作,電気回路,電子回路,電気資格 2021/1/11

 

 

転写シートによる、プリント基板の製作方法を紹介します。

 

製作方法としては、こんな感じになります。

 

  • 電子回路を設計し、プリント基板パターン設計をします。
  • レーザー(トナー)プリンタを使って、転写シートにプリントパターンを印刷します。
  • 転写シートに付着したトナーは、熱と圧力を加えることによって胴張積層板(以降、カット基板と言います)に転写されます。
  • カット基板のパターンのない部分は銅箔が見えているので、エッチングを使ってこの部分を溶かします。
  • カット基板の銅箔に付着した転写シートを除去します。
  • プリントパターンが完成します。
  • 電動ドリルでカット基板に電子部品を挿入する穴をあけます。

 

私は電子回路図、プリント基板パターン設計に、フリーウェアのKiCad(キキャド)を使用しています。

 

トランジスタ技術2013年5月号、2016年7月号に特集が掲載されています。また、トランジスタ技術SPECIAL、一人で始めるプリント基板作り「完全フリーKiCad付き」があります。KiCad は、フリーウェアでありながら商用利用もでき使用期限もなく、高価なプリント基板CADに遜色ない性能を持っています。本当に有り難いことですね。この場を借りて感謝申し上げます。

 

DIP型のIC (300mil、600mil)、1608 (1.6mm×0.8mm) のチップ抵抗、チップコンデンサを使った、プリントパターンを基板にしたいと思います。
最小パターン幅は、15mil (0.381mm) としました。基板サイズは、100mm×150mmとし、カット基板は、サンハヤト社製 100mm×150mm×1.6t (No.12 片面紙フェノールFR-1) を使います。

 

転写シートによるプリント基板の作り方

 

Techniks社製の [Press-n-Peel Blue Transfer Film]の転写シートを使いました。他にも転写シートはあるようですが、今のところ、これしか使ったことがありません。 aitendoさんにも安価な転写シートが販売されていますが、この転写シートがなくなったら、使ってみようと思います。
Press-n-Peel Blue Transfer Film パターン転写シート

 

基板外形の外枠 (KiCadでは、Edge.Cutsのみにチェック) をA4用紙に印刷します。これで、だいだいの位置を把握します。左上にある丸印は、プリンターに用紙を挿入する方向です。挿入方向を反対にすると位置がずれてしまいます。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

基板外形の外枠より少し大きく転写シートをカットし、光沢がない面を上にして、まわりはセロハンテープで止めていきます。この光沢がない面にプリンターのトナーを付着させるというイメージです。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

パターンを印刷します(KiCadでは、導体レイヤ B.Cuにチェック)。片面基板ですので、この面が、はんだ面になります。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

基板外形をハサミで切ります。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

カット基板は、銅箔に付着した油などを除去する為、スチールウォールを使って磨きます。私は100円ショップのものを使っています。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

パターンを印刷した方をカット基板側にして合わせ、まわりは耐熱テープで固定します。普通のセロハンテープでは、熱でネチャネチャになります。耐熱テープは、秋月電子通商の耐熱テープ(ポリイミドテープ)10mm幅を使っています。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

ここで、熱と圧力を加えるため、ラミネーターを使います。これも転写シートで定番?のアイリスオーヤマ社製 LTA42Eを使います。ガイドを外して電源スイッチは、C の位置にします。本来の仕様はラミネーター厚さ150ミクロンとなっていますが、そこに基板厚さ 1.6mm のものを通すので約10倍の規格外れになりちょっと心配。色々と試行錯誤の結果、連続して8回通します。通す回数は、周囲の温度変化が関係してくるのかも知れません。基板は熱くなるので作業用手袋をして作業をします。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

ちょっと、カメラのフラッシュが反射してしまいましたが、パターンが、くっきり見えてきました。ちゃんと転写しているようです。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

自然冷却させて手で触れるようになったら、ゆっくりと端の方から転写シートをめくっていきます。この瞬間が緊張します...ガ~ン!、右上の方が転写されていません!、失敗したぁ~
転写シートによるプリント基板の作り方

 

こういうときは、転写シートをアセトンで除去し、元の状態に戻して、再度、挑戦します。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

テッシュペーパーにアセトンを染みこませ拭いていきます。アセトンは有機溶媒(有機溶剤)なので、換気を十分にして取り扱いには注意します。終わった後は手を洗いましょう。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

もう一度、挑戦!、今度はバッチリです(ちょっと基板サイズの違うパターンで行いました)。この部分はノウハウ的な要因が大きいのですが、私はCANON社製、レーザービームプリンターLBP6040を使っています。印刷品質の設定で濃度を濃くしたり、薄くしたりと設定を変えながらベストとなる条件を探しています。ある条件で上手くいったので、数週間後に同じ条件で行ってもダメなときがありました。周囲の温度・湿度が関係するのか、わかりません。おそらく、トナー品質・転写・定着方法に影響されるようで、転写シートとの相性もあると思います。もし、コンビニ等で手差しプリンターが使えるか、または、オフィス向け複合機が使えるのであれば、その方がベストかな?と個人的には感じています。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

バッチリとカット基板に転写しています。気持ちいいなぁ~。もし、転写されていない部分があれば、油性マジックで修正します。これから銅箔を溶かすエッチング作業を行いますが、青いパターンの銅箔が見えていない部分は銅箔が溶けないので、この部分がパターンとして残ります。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

転写シート側(ネガ側)です。白い部分が転写された部分です。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

100mil (2.54mm) ピッチのCN6コネクタ部分です。サーマルランドも出ています。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

1608チップ抵抗、チップコンデンサ部分です。使えそうですね。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

エッチングを始めます。腐食液(塩化第二鉄液)を温めるサーモヒーターは、サンハヤト社製のTH-100、バットサイズは、190mm×235mmです。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

腐食液(塩化第二鉄液)を用意します。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

パッドに腐食液(塩化第二鉄液)を 200cc 入れます。サーモヒーターのスイッチを入れ、時々、かき混ぜながら温度が約40℃になるまで待ちます。40℃を超えすぎると冷やすのに時間がかかります。また、季節によって温度上昇は違ってきます。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

基板を入れます。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

時々、かき混ぜながら銅箔が溶けているか確認します。早すぎても遅すぎてもダメです。一番、神経を使う作業です。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

銅箔が溶けていることを確認したら、テッシュペーパー等で十分に拭きます。拭いたら水で洗います。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

アセトンで転写シートを除去し、念のため、もう一度、スチールウォールで磨きます。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

最小パターン幅は、15mil (0.381mm) です。10mil (0.254mm) もできた事があるのですが、この方式では精度が安定しません。これが限界かな?、転写状態、エッチング状態で左右されますね。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

真ん中の下の方にある、1608チップ抵抗パターンです。何とか使えそうです。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

銅箔面を保護し、はんだ付けをよくするため、フラックスを塗布します。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

部品が入る、穴をドリルであけます。必要に応じて、0.8mm、1mm のドリルを使い分けます。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

部品を実装しました。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

はんだ面です。はんだは共晶はんだです。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

1608チップ抵抗、チップコンデンサです。何とか実装できました。
転写シートによるプリント基板の作り方

 

この転写シート方式を使う前は、パターンをインクジェットプリンターで、インクジェットフィルムに印刷し、フィルムを感光基板に露光、現像をしていました。しかし、この露光時間、現像時間、現像温度の管理が難しく四苦八苦していました。ネットで調べると、転写シートで基板を製作する方法を知り、今では、ほとんどミスが少なくなりました。

 

インクジェットフィルムにパターンを印刷
転写シートによるプリント基板の作り方

 

感光基板に露光する、サンハヤト社製のちびライト
転写シートによるプリント基板の作り方

 

1980年代の頃は、方眼紙に回路図を書き、その回路図から、テープ、レタリングを使ってOHPフィルムに貼り付けていました。紫外線蛍光灯を用意して、感光基板の上にOHPフィルムを密着させ、時間を計り露光してパターンを作っていました。 やがて、パソコンが普及し電子回路CAD、プリント基板パターンCADが出始めましたが、個人で手が届く価格ではありませんでした。1990年代に入り、インターネットが普及し始め、パソコンの性能も高性能になり価格も手ごろになってきました。今では、フリーウェアで高機能な電子回路CAD、プリント基板パターンCADを使って、ガーバーデータを出力し、それを基板製作業者にメールで送ると、数万円でプリント基板が個人でもできる時代になりました。電子部品もチップ化が当たり前となり、100mil (2.54mm) ピッチのユニバーサル基板を使って手組で製作することが少なくなってきました。

 

あとは、アイディア次第で何を作るか、でしょうか。

 

 

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